学長の長谷川です。本日7月27日は、横浜キャンパスを訪問しました。横浜キャンパスは、戸塚校と保土ケ谷校の2か所に分かれて活動しています。そこで、午前中は保土ケ谷校へ、午後は戸塚校を見学しました。
保土ケ谷校では、「生活」の授業でエコバッグ製作に取り組んでいました。事前に行ったSDGsの学習をふまえ、自分たちが身近にできることとして、レジ袋を使用せず、エコバッグを使用しましょうということで、古着をリサイクルしてエコバッグの製作をすることに決まったそうです。
皆さん、針と糸を使って、縫製作業をしていました。完成が楽しみですね!
保土ケ谷校の別のクラスでは、「労働」の授業で、2グループに分かれて「コンセンサスゲーム」を行っていました。これは、無人島で生活するために何が必要かについて話し合う中で、意見を出し合い、ひとつにまとめていくという活動です。話し合いでは、「自分はなぜそれが必要だと思うか」などについて各自が周囲を納得させる合理的な説明をしていました。このような活動を通じて、学生たちは、自分の意見を他者にわかりやすく説明し、客観的な意見を言う力を身につけていきます。
戸塚校では、「経済」の授業が行われており、今日のテーマは、「銀行ってなんだろう?」で、銀行の役割について考えていました。
「お金を貸す」という役割の説明では、お金を誰にでも貸すわけではない。お金を貸す相手に「信用」があるかを確認している。ということで、より具体的なイメージを持ってもらうために、ドラえもんのジャイアンとしずかちゃんを例に、「例えば、自分のゲーム機を人に貸すとき、もしかしたら返してくれないかもと思う人には貸さないよね」という話で理解を深めていました。
戸塚校の別のクラスでは、「基礎学力」で、「ヘンゼルとグレーテル」の童話を題材に、まず、ひとりずつ順番に音読をしました。音読はとても大事です。文章がスラスラと読めるようになることは、生活力の向上につながります。
それから、物語の感想を出し合い、登場人物とあらすじについて意見を求めていました。これは読解力の向上につながります。その後、登場人物の言動について話し合います。
その話し合いはとても興味深いものでした。こうした童話は、善者と悪者が分かれていて、悪者をやっつけてめでたしめでたしというシンプルなストーリーになっていることが多いですが、私が授業を受けていて興味深かったのは、ラストの場面で「魔女の死」についての学生たちの感想でした。
魔女の死の場面はこちらです。
「魔女がグレーテルを呼び、目の悪い自分の代わりにパン釜に入ってパンの焼け具合を確かめろと言いつけた。内心、魔女は中に入ったグレーテルを閉じ込めて焼いて食べるつもりだった。グレーテルは釜に入るやり方が分からないふりをして、魔女に手本を見せるように促した。魔女が釜に入った途端、グレーテルは魔女を押し込み外からかんぬきを掛けた。釜の中から魔女のうめき声がし始めたところでグレーテルは台所から逃げ出したので、魔女はそのまま焼け死んだ。」
ここで教員は、学生たちに「魔女が死んだことについて、皆さん、どう思いましたか」という質問をしました。もしかしたら小さい子どもだったら、魔女は悪者だから、「ざまあみろと思った」「いい気味だ」などという回答が返ってきそうです。
しかしゆたかカレッジの学生たちの感想は違っていました。
「しょうがない」が1名、「やりすぎ・かわいそう」が4名という結果でした。
大半の学生が後者を選んでいます。私はそのとき、カレッジの学生の判断力をとても誇らしく思いました。私は、これは、人権につながるテーマだと思います。確かに魔女は、グレーテルを食べようとした悪いやつです。でも、その魔女に対して、「やりすぎ・かわいそう」と思える彼らの感性の豊かさに感動を覚えました。
さて、ゆたかカレッジの日々の授業でとても大切にしていることのひとつは、「板書計画」です。
さて、ゆたかカレッジの日々の授業でとても大切にしていることのひとつは、「板書計画」です。
私はしばしば支援教員にこういう話をします。
「言葉は見えません。また言葉というのは、意識的に相手の言葉を聞こうと集中しなければ頭に入ってきません。特に知的障害の人は視覚優位の人がほとんどです。だから、授業では、ホワイトボードがとても大事です。ホワイトボードに板書をするときは、この授業は「何を目的」に、「どんなことを学ぶために」行っているのか、また、今、その「話の中のどのあたりか」が一瞬にしてわかるように、板書をしないといけません。そのためには授業の前に必ず板書計画をたててください。また、板書には、「めあて」「本時の流れ」などを記載し、全体像がわかるように表示する。マーカーは黒、赤、青を使い分け、わかりやすく書くこと。かすれたマーカーは使わないことです。」
今日も学生たちと机を並べて勉強し、彼らの元気な姿に癒やされた1日でした。
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