展望表紙このシリーズ、まだまだご紹介したい感想がたくさんありますが、とりあえず今回を最後にしたいと思います。長文にお付き合いくださいましてありがとうございました。

職員たちの感想文をお読みいただき、知的障害者の青年期の学びの意義や権利としての高等教育の機会の保障などについて、ご一考いただけましたら幸いです。

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http://kyf-college.blog.jp/archives/1077436433.html

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どういった経緯でゆたかカレッジが創立され、私たちはどういった要望やニーズを受けているのかということが分かった。始まりは社長の娘さんに対する思いが設立のきっかけだったが、実は同じような思いを抱いているご家族が日本には非常に多く存在していた。「自分の思いや考えを声に出せない」という日本人の特性や日本の社会の現状に阻まれ、障がい者の「選択肢の狭さ」「自由のはく奪」が行われてしまっているのかもしれないと感じた。日々支援業務をしている中で「支援=利用者さんの自立」と思っている節があったが、利用者さんが「自立をしたい」と思っている背景には、ご家族の利用者さんに対する愛情や強い想いがあったことに気づかされ、私たち支援教員が利用者さんやご家族から「何を求められているのか」「どのようなニーズに答えていくべきなのか」を意識してこれからの支援に励んでいきたいと思った。

ゆたかカレッジの強み魅力は「同年代の青年たちと切磋琢磨しながら、同じ目標に向かっていける環境があること」だと感じた。ゆたかカレッジに通っている利用者たちは「学ぶことの意欲が同じレベル」であることからより一層たくさんの刺激を受けることができるのではないかと思う。資格取得や知識を増やすことも大切だが、「人とのかかわりでしか学べないこと」や「失敗から学ぶこと」などの「人間的成長」も4年間という限られた時間の中で、カレッジの強みを活かして提供していきたい。しかし、「何を学びたいか」というものはそれぞれの利用者で異なるため、私たち支援教員が見極め、それぞれの利用者とご家族のニーズに合った支援を提供していかなければならない。このことを忘れず従事していきたい。

ゆたかカレッジの卒業生たちの「働く」ということに対する前向きな姿勢がとても印象的である。「働く=社会貢献」という考え方が彼らの自尊心の高さに繋がっていて結果的に離職率の低さを実現できているのだと感じた。またカレッジでの就労実習が役立っている事も大きいと思うが、就労移行支援以前の自立訓練での自己覚知を行うことで自身の向き不向きをわかっていることなども大いにかかわっているのだと感じた。自立訓練の時点で「利用者の自尊心を育てる」「自身の障がいを理解する」ための支援を行っていくことが利用者たちの「社会貢献=幸せ」に繋がっていくのだと思う。前向きな姿勢だからこそ良好な人間関係を築くことができており、よい事の連鎖が起こっている。カレッジを卒業した後も利用者たちが新しい目標に向かって意欲的に取り組める環境や考え方を提供していきたい。

「知的障がい者にとってのゆたかカレッジの存在意義は自分崩し、自分探しの場だと思っている。」「トラブルが起こったらラッキー。トラブルを自らの力で克服しない限り成長はない。いつまでも支援の手が必要になる。」という話がとても印象に残っている。「できることを伸ばし、出来ないことに挑戦する」等プラスになるような支援を提供する事を意識していたが、「トラブルに直面することによって自分を崩す。=新しい価値観を持つ」といったプラス要素になる。これは障がいのある方たちだけでなく私たちにも言えることである。支援という言葉から、慎重になりすぎていた部分があった。丁寧に扱うべき部分と利用者が自身で切り開くべき部分での見守り、その後のフォロー等、利用者とかかわる中で私自身も利用者から刺激を受け学び、支援について考えながら成長していきたいと感じた。

障がい者の「人間力を高めるための学びの場」と「それを発揮できる場」が今の日本には圧倒的に不足している。インクルーシブ社会の実現のためには「学び」「就労」「遊び」という具体的な人とのかかわりの中で、「障がい者の人権」を提訴し変えていかなくてはならない。障がい者の「生きる力を高める」「人間力を高める」ことは私たちの支援教員としての役割である。障がい者が「社会参加できる社会」「社会貢献できる社会」「自己実現をかなえられる社会」づくりは私たちの人としての役割である。「障がい者の生涯学習」「障がい者が社会参加できる環境、喜び」をゆたかカレッジから提供していくことがインクルーシブ社会の大きな一歩になることを願って、日々の支援にあたっていきたい。

入職前は自立訓練、就労移行支援というものが漠然とした形でしかイメージできていなかった。入職後は自立訓練の支援を行っているが、自身の漠然としたイメージと支援提供記録を頼りにおこなっている支援が「果たして利用者のためになっているのか」「間違った支援になってしまっていないか」と不安に感じることがあった。書籍を読み進めていくうちに「どういった段階を経て就労移行支援へと移行していくのか」「障がい者の就労の先の現実」を知ることができ、私たち支援教員が提供していくべき支援について考えを深めることができた。「未来を担う若者たち」の中にはもちろん障がい者も含まれている。「ゆたかカレッジでの学び」を通して障がい者たちが社会参画を行い、すべての人が暮らしやすいインクルーシブ社会の実現を叶えることを願う。そのための「学び」を私自身が学びながら成長し提供できるように努めていきたい。(T.A)