
今朝、TBSラジオの番組『土曜朝イチエンタ+PLUS!』の中の「人権TODAY」というコーナーで、約8分間にわって、ゆたかカレッジの取り組みが紹介されました。
TBSラジオのウェブサイト→『知的障害者の「4年制大学」的福祉施設』
番組の放送(音源)→https://youtu.be/LX_svR0R7Fc
以下、オンエアの様子をご紹介します。
堀尾:人権をめぐりホットな話題をお伝えする人権TODAY。今日の担当は進藤誠人ディレクターです。おはようございます。
進藤:おはようございます。
堀尾:今日はどんな話題でしょうか。
進藤:今日は、知的障碍者の進学についてです。知的障碍者が大学や専門学校に進学する人の割合はどれくらいかというと、わずか0.4%。
堀尾:はーあ。
進藤:ほぼ0ですね。
堀尾:うーん。
進藤:日本では知的障碍者を受け入れる大学はほとんどないと言っていい状況です。そのため、知的障碍者は高校にあたる特別支援学校の高等部を卒業した後はですね、福祉施設の作業所などに入るか就職するかの二者択一となっています。そうした状況の中、福岡県の社会福祉法人鞍手ゆたか福祉会は、知的障碍者の学びの場として4年制の大学に見立てたカレッジを設立して現在5カ所で運営しています。そのひとつ東京新宿区にあるカレッジ早稲田を先日取材したんですが、まずはカレッジがどんな施設なのか理事長の長谷川正人さんに聞きました。
長谷川:「もっと僕は勉強して一人前の大人になりたい」とか「もっといろんな経験をして自分をもっと成長させたい」とかいう、そういった人たちがいるんだけれども、まあそういった人たちが行く場がないという中で、4年間かけて健常者が大学で学ぶのと同じように、いろんな経験をして、友だちといろんな関わりの中で成功体験もあり失敗体験もありと、そういったことを経験して多感な時期を過ごして一人前の大人になってたくましく社会に出て行くと。まあそういったことを準備する場所です。
堀尾:人間20歳前後の4年間というのはいろんなことが経験できる大切な時期といえますもんね。
進藤:そうですね。このカレッジについていくつか説明をしたいんですが。
堀尾:はい。
進藤:障害者総合支援法が定める自立訓練事業と就労移行支援事業を組み合わせた福祉施設で授業料は原則無料です。能力の高い人の普通科と障害の重い人向けの生活技能科のふたつのコースがありまして、設立3年目のカレッジ早稲田では、現在5人の3年生をはじめ、およそ40人が学んでいます。普通科ではですね、1、2年生は社会に出るためのスキルを身につける教養課程としてですね。たとえば、「基礎学力」の授業では漢字の読み書きや計算、それから「経済」の授業では電卓の使い方、それから買い物の計画、銀行の利用法などを学びます。そして「ヘルスケア」の授業では、栄養や食事、それから病院の利用法、身体の仕組みなどを学ぶということです。そのほか資格を取る授業や自分の興味のあることについて1年間かけて研究論文を書く「自主ゼミ」などがあるんですね。そして3、4年生はですね。今度は就職に向けたスキルを身につける専門課程としてですね、教室を企業の職場に見立てて清掃や介護、事務管理などの職業訓練を行うんですね。4年生ではさまざまな職場を見学して就職を希望する企業の職場で一定期間実習するインターンシップがほとんどということです。そのほかのも、スポーツ、芸術などの授業もあります。私は教室で授業も見学したんですけれども、ちょうど雰囲気的には小学校とか中学校の教室みたいにアットホームな雰囲気でした。そんな生徒さんたちにカレッジについて聞きました。
学生A:私自身がひとり生活でそんな力が不十分で自分の力で何をしようかっていうのがわからないからここで勉強したいと。養護学校の時は、自分で話をできなくて、でもここだとそれを克服できて。
学生B:本当は、第一希望は違う会社に行こうかなと思ったんですけど、仕事はまだ早いなと思って、ハードルはコミュニケーションですね。友だちを大事にしたいなって思って、自分に合った仕事を探していきたいなと。
長峰:就職する前にもっとしておきたかったことがあったのかなと思いますし、勉強もそうですし、人とのかかわり方とか、まだまだやっておきたいという思いが強いみたいですね。
進藤:で、このふたりはですね、特別支援学校では2年間で職業訓練を詰め込まれて厳しい指導の中、仲間があまりできなかった。でもここに来たら仲間も多くて自分のやりたいことができるし、興味のある仕事場にも見学に行けるということで楽しそうに話してくれました。そしてこのカレッジ早稲田より先にできた九州のカレッジ福岡ではですね、昨年度3人が卒業していまして、物流や医療、それから自動車関係の仕事についています。理事長の長谷川さんは卒業した生徒のフォローも大事だと話します。
長谷川:知的障碍者の場合は、だいたい3年以内に離職する率が4割ぐらいなんですよ。でやっぱり定着支援といいますか、就職してそれがゴールじゃなくて、やっぱりそれは出発点で、カレッジは最初の半年ぐらいは、だいたい週に一回巡回するんですね職場を。で本人がうまく職場の方たちとコミュニケーションを取れているかとか、仕事がうまくやれているかとか、ストレスがたまっていないかとか、そういったことを観察しながら適切なアドバイスとかあるいは企業さんの方にこういった対応をしていただきたいということをお話したりとかですね。しながら定着支援を行います。
堀尾:まあ社会に出ると不安はいっぱいでしょうからね。
長峰:はい。
堀尾:こういう後ろ盾になっている、こういうシステムがあるといいですね。
進藤:そうですね。このカレッジでは大学との交流をとても重視しているということなんですね。それはなぜでしょうか、再び長谷川さんです。
長谷川:同じ年頃の青年たちが障碍のあるなしにかかわらず交流していくというのはとっても大きな意味があるし、それは健常者の大学生にとっての意味が大きいとも思っているんですね。先日の相模原のとても大変な事件がありましたけれども、障碍を持った人たちと触れ合うことの中で一般の人たちが障碍を持った人たちのことを理解するという、そういった機会が大事だと思うんですよね。
長峰:本当に私もそう思います。実際に話をしてコミュニケーションを持たないとわからないことっていっぱいあると思いますね。
堀尾:そうですね。
進藤:知的障碍者はですね、海外では学びたい意欲があれば大学に入れるわけなんですよね。普通の健常者と一緒にキャンパスライフを送っているところもあります。長谷川さんはそんなアメリカの大学を何度も視察をしているそうで、日本もですね、国の制度として知的障碍者が大学に進める道を整えてほしいというふうに話しています。
長峰:はい。
堀尾:はい。日本の大学はほとんどが試験に合格した人だけが入学できるシステム。
長峰:そうですね。
堀尾:知的障碍者の受け入れについては考えられていない状況ですね。0.4%と言っていましたね。ほとんど0に近いということで、大学生と同じように4年間勉強できるこのカレッジの取り組み、健常者と障碍者の教育格差、就職格差などが縮まっていく。まあいっぺんにはできないと思いますけども、こういうものがどんどんできていけばいいと思いますね。進藤ディレクター。ありがとうございました。
進藤:ありがとうございました。
堀尾:人権TODAY。東京都人権啓発センターがお送りしました。
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