展望表紙

『知的障害者の高等教育保障への展望』の職員感想文を紹介させていただきます。今回もかなりの長文ですが、よろしければご一読いただけましたら幸いです。

本の購入をご検討の方はこちらをご覧くださいませ。お得なキャンペーン実施中です。
http://kyf-college.blog.jp/archives/1077436433.html

************************************************
ゆたかカレッジができた背景と長谷川社長の知的障害をもつ方の高等教育の保障についての思いが伝わってきました。オープンキャンパスなどで長谷川社長が保護者に対し講演している内容が更に詳しく記されており、日本の社会構造に対する課題点や雇用率、離職率など具体的な数値が記載されていたため、知的障害者の高等教育を受けることの必要性をよりわかりやすく理解することができました。

第2章を読んでいく中で普段、自分自身が何を意識し授業を行っているか、学生の何を見ているかを改めて考えさせられました。この章ではゆたかカレッジの4つの目的、3つの教育理念について記されていますが、その目的、教育理念に沿った授業を行うことができているか、そもそも自分自身その目的、教育理念に沿っているのかを振り返る良い機会にもなりました。本章中、折れない心(レジリエンス)という言葉が何度も使われているが、社会で働いていく中で障害の有無にかかわらず、すべての人に必要なものであります。学生だけではなく、自分もレジリエンスを身につけること、そして、レジリエンスを含めた目的、教育理念を意識した支援、授業を展開していきたいと思いました。また、本章では各キャンパスでの学生の姿が記されていましたが、「学生」といっても一人ひとり性格も特性も違うということを改めて認識し、学生の些細な行動や様子をよく観察し共有することの大切さを感じました。

私自身、今年入社したばかりであるため、卒業生と関わる機会がありません。そのため本書を通し、卒業生の声を聞くことができ良い機会となりました。それぞれの学生がゆたかカレッジに通い、充実した日々と学びを得ることができ、自信をもって社会へと踏み出した背景が伝わり、ゆたかカレッジでの支援教員としてのやりがいも同時に感じました。また、保護者座談会の冒頭でそれぞれの子どもの生い立ちについて話していましたが、学生の生い立ちを保護者から聞く機会があまりないためとても新鮮に感じました。それと同時に現在所属するキャンパスの学生の生い立ちについて保護者から聞き取ってみたいという気持ちになりました。現在は各教員と保護者との顔合わせというのがモニタリングでの面談がメインになっているように感じます。保護者と支援教員が顔を合わせて交流できる機会が今よりも増えれば、学生の生い立ちという生活歴を考慮したよりよい支援が提供できるようになるのではないかと思います。

日々学生たちと交流していく中で、今年一月に入社してから今日までという短い期間の中でも学生たちの成長を感じます。目に見える学生たちの成長は私のやりがいとなりモチベーションにもなっています。第4章ではそのやりがいやモチベーションに繋がるようなエピソードが文章化され共有できたこと、更に他の職員の視点にも触れることができ、他の職員も同じようにやりがいやモチベーションを感じながら学生たちと日々接しているのだということが分かり、単純にとてもうれしく思いました。学生たちの成長は私たち職員の成長にも繋がり、私たち職員のやりがいやモチベーションの向上は学生たちのやりがいやモチベーションに繋がるということを感じました。また、普段他のキャンパスの職員の話を聞く機会があまりないため良い機会になったと思います。

第5章の中で、中邑氏が自身の関わっていた知的障害者たちが親と子の関係が切れず、今でも親子関係が非常に強いということ、そして、「多くの高校生は大学に進学するとき初めて下宿をして親から離れるプロセスをたどる。障害のある子たちも同じようなプロセスが必要だと思う」とおっしゃっていたこと、炭谷氏が「障害者であろうが高齢者であろうが親のいない子であろうが、やはり自分の人生を自分なりに生きていける、個人として尊厳が守られるようにしなくてはならない」ということをおっしゃった上で保護が本人の選択を狭めてしまうのではということをおっしゃっていたことがとても印象に残りました。今の日本では障害者の権利を唱えておきながら、障害者がひとりで生きていけない、または、生きていくのを狭めてしまうような構造が今の日本の社会構造や健常者の意識の中にあることがこれらの話からとても伝わってきました。障害者に「ひとりで生きる」という選択をさせてあげること、それに必要な環境を整えるためにもゆたかカレッジのような取り組みが必要だということを強く感じました。

知的障害者は健常者に比べ発達が緩やかだからこそ、健常者よりも多くの時間をかけ学びを深めるべきであり、支援教員はより時間をかけてでも多くのことを教えるべきだと思います。しかし、今の教育の場、特に義務教育では、年齢が上になるにつれ、学びの足りない子どもたちでも自動的に学年は上になり、卒業すれば自動的に社会に放り出されてしまうという現状があります。これは、教育、障害という点で考えたときの社会構造の欠点であり、教育の場でそれを補うことができないのなら、福祉の方で補っていくしかないということを本書を読んでより強く感じました。ゆたかカレッジではまさに補わなければいけない部分に視点を当て、福祉のみならず、教育、労働という点からも補うことを目的として取り組んでいることを改めて意識することができ、更にこの仕事へのやりがいを感じました。本書を通し感じたこと、学んだことをこれらの日々の業務に生かし、学生たちにより良い支援が出来る人材、環境が作れるよう努めていきたいと思います。(S.Y)