彼らがカレッジ早稲田に4月に入学してきてから、もうすぐ1年が経とうとしてます。私が担当した中でもS氏は、この1年の間に大きく変わった学生さんの一人です。

通学し始めた当初は、皆とてもおとなしく過ごしていましたが、1、2か月程経つと、少しづつ本来の自分の姿が見え始めました。

S氏は、もともと人の顔や名前を覚える事が困難で学生同士では、『おい』や『ねぇ~ねぇ~』などと呼ぶ事が精一杯でした。その中でも、自分が興味ある事(伝説や古代文明、神話など)に触れるキーワードが出てきたりすると、人の話しを聞く事などは、出来なくなってしまい、とにかくしゃべり始めてしまい、他の人が話しだすと、『うるせぇ』『ぶっ殺すぞ』と威嚇する言葉を浴びせてしまう事が増えてきました。

5月のある日に、とうとうそれが爆発し大暴れ。机を踏みつけ、ホワイトボードを押し倒しと我慢の限界に到達したようでした。その都度、本心を聞く事に専念していく中で、友達が欲しい。仲間がいる。という若者本来の願望の中からその『どう、話したらいいのかわからない』という悩みも見えてきました。

それからも、言動は変わる事はありませんでしたが、夏過ぎあたりから、少しづつですが仲間の学生を名前で呼んだり、暴言を発してしまった後に手を合わせながら『ごめん、そんなつもりで言ったんじゃないんだ。つい・・・』と手を合わせて謝るなど、人に対しての接し方が変わってきました。

まだまだ、顔を見ないと名前が出てこない。ついつい、感情が高ぶると声を荒げてしまう事などはありますが、人との関わりを覚え始めたS氏を愛くるしく思います。

また、4月に新しい学生さんが入ってきたら、しばらくはそれぞれの学生さんが荒れることでしょうが、諦めずに大人同士として向きあっていきたいと思います。

               カレッジ早稲田 伊藤